重要文化財・青磁陽刻 龍波濤文 九龍浄瓶
せいじようこく りゅうはとうもん きゅうりゅうじょうへい高麗時代・12世紀
高33.5cm
大和文華館所蔵
写真 六田知弘
釈迦が誕生した際に天から九龍が香水を降り注いだという「九龍灌頂(きゅうりゅうかんじょう)」の説話にちなんだ、九龍をモチーフにした他に類をみない作品です。仏前に清らかな水をささげるための仏具である浄瓶にふさわしいものといえます。精緻に造形された九龍の頭部は力強く荘厳で威容をそなえ、それぞれの龍頭に対応する龍身が、浄瓶の器表に流麗な陽刻文様で表されています。しかも、それらは浄瓶内部とつながっており、九龍の口から浄水が注がれるしくみになっています。本作は高麗青磁の釉色がもっとも美しい12世紀のものであり、当時高麗の人々はそうした釉色を「翡色(ひしょく)」と呼んで金銀器以上に貴んでいたことが文献に記されています。ヒスイのきらめきをたたえた高麗青磁の唯一無二の最高傑作の一つです。