エリック・ゼッタクイスト 《青磁 八角瓶》
2016年宋時代の陶磁器から影響を受けてきたというゼッタクイストは、南宋官窯の特徴を有するこの瓶を、中国陶磁の古典の「頂点」だと讃えています。写真作品にみられる、墨の滲みを思わせる質感からも窺われますが、彼はこれを瓶と同時代の山水画のスタイルで表現しました。この山水表現は、片側から強く光を当てることで陶磁器の表面に現れた陰影をもとにしています。前景には小舟が遊び、小路を進むと山上に滝と楼閣が現れる、心象風景としての山水画が立ち現れてきます。
エリック・ゼッタクイスト(1962-)は、1992年までの10年間、現代美術家の杉本博司(1948-)のもとで働きながら現代的な写真表現と東洋の古美術を学び、現在はニューヨークを拠点に活動しています。「古陶磁の肖像」とも言える「オブジェクト・ポートレイト」は、古陶磁の細部を高度に抽象化したシリーズです。ゼッタクイストはこのシリーズについて「東洋と西洋、そして古代と現代の出会い」だとして、ミニマリストの作品や、宋磁からの影響を挙げています。彼の写真は、宋時代の山水画を意識したものもあれば、アレクサンダー・コールダー(1898-1976)に代表されるモダニズムの構成を思わせる作品も見られます。
彼はこれまでにフィラデルフィア美術館(2014年)やバンコクの東南アジア陶磁美術館(2016年)において、各館の所蔵作品を撮影した「オブジェクト・ポートレイト」シリーズの展覧会をおこなってきました。本展は、日本で初めて彼の作品を紹介するものであり、2016年に彼が当館の所蔵品を撮影した34点の写真を、被写体となった陶磁器作品とともにご覧いただきます。時代の異なる美術の様式を行き来するように、ゼッタクイストの眼をとおして陶磁器の新たな表情を見つめ直します。
企画展 「オブジェクト・ポートレイト Object Portraits by Eric Zetterquist」
平成30年12月8日(土)~平成31年2月11日(月)
月曜日(12/24、1/14、2/11は開館)、12/25(火)、
1/15(火)、年末年始[12/28(金)~1/4(金)]
大阪市立東洋陶磁美術館
午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)※12月21日(金)から12月24日(月)は午後7時まで
大阪市立東洋陶磁美術館
一般600(480)円、高校生・大学生360(300)円
※( )内は20名以上の団体料金
※中学生以下、障がい者手帳などをお持ちの方(介護者1名を含む)、
大阪市内在住の65歳以上の方は無料(証明書等提示)
※本料金で館内の展示すべてをご覧いただけます。
写真作品 34点
平常展
安宅コレクション中国陶磁・韓国陶磁、李秉昌コレクション韓国陶磁、
日本陶磁、沖正一郎コレクション鼻煙壺
特集展「高田コレクション・尾形コレクション ペルシアの陶器-色と文様」
大阪市立東洋陶磁美術館
TEL.06-6223-0055 FAX.06-6223-0057
宋時代の陶磁器から影響を受けてきたというゼッタクイストは、南宋官窯の特徴を有するこの瓶を、中国陶磁の古典の「頂点」だと讃えています。写真作品にみられる、墨の滲みを思わせる質感からも窺われますが、彼はこれを瓶と同時代の山水画のスタイルで表現しました。この山水表現は、片側から強く光を当てることで陶磁器の表面に現れた陰影をもとにしています。前景には小舟が遊び、小路を進むと山上に滝と楼閣が現れる、心象風景としての山水画が立ち現れてきます。
南宋時代・12-13世紀、官窯
高21.0㎝
住友グループ寄贈(安宅コレクション 登録番号00569)
撮影 六田知弘
ゼッタクイストの写真作品は、北宋時代の水注の頸部と注ぎ口の間の空間を切り取って私たちに提示します。彼は、このシンプルな形状に当時の禅からの影響を見ていますが、同時に私たちのモダンな感性を刺激するものとしても捉えています。確かに、モノクロームの色面で構成された彼の作品は、ハード・エッジ・ペインティングを意識したものと考えられます。具象的な陶磁器の写真から、抽象化された独自の表現へと昇華しています。
北宋時代、越窯系(龍泉窯)
高22.6㎝
登録番号01204
撮影 六田知弘
ランダムに配置された黒い点は、線で結ばれ、ゼッタクイストも言うように、アレクサンダー・コールダー(1898—1976)のモビール作品を想起させます。この黒点の配置は、朝鮮時代の盆台に施された、蓮花文の透彫による「透かし」の部分にもとづきます。被写体となった陶磁器作品は、線刻や点線が加えられた蓮花文の、生命力あふれる造形表現が魅力的です。しかし表裏一体をなす透かしの空間に目を転ずると、モダニズムの構成が浮かび上がり、異なるリズムが感じられることに気付かされます。
朝鮮時代・16世紀
高39.5㎝
住友グループ寄贈(安宅コレクション 登録番号00247)
撮影 六田知弘
「MOCO PASSPORT(年間パスポート)」は、大阪市立東洋陶磁美術館に1年間何度でもご入館いただける年間パスポートです。世界的に高く評価されているコレクションから、幅広いテーマで企画される特別展まで、心ゆくまでお楽しみください。
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